禿は、かむろ(かぶろ)、ハゲ?
Posted on | 11月 14, 2020 | No Comments
禿は「かむろ」(かぶろ)と読みますが、いまでは「ハゲ」のほうが一般的かもしれません。
「かむろ」は、平安時代の『栄花物語』(みねの月)にみえます。幼童の短く切りそろえた髪のこと、あるいは幼童のことを意味します。
平安時代末期ごろに成立したとされる『今昔物語』(第六巻)には「頭の髪なくして禿なり」という記述があり、こちらは「かむろ」とよませてハゲ頭を表しています。「禿」は元来「かむろ」(かぶろ)といい、幼童とハゲの両方の意味があったようです。
「かむろ」といえば江戸時代、遊郭で花魁などに仕える少女がしていた髪形がよく知られています。いわゆるオカッパで、いまならショルダーレングスのボブヘアといったところでしょうか。
「かむろ」ヘアに近い髪形をした男は、鎌倉時代後期から室町時代にみられます。当時は、髻をして烏帽子を被るのが男の一般的な頭髪風俗でしたが、ザンバラ髪の男がいました。ザンバラ髪のことを主に「ほう髪」といいますが、「かむろ」とも呼んでいました。
「かむろ」頭の姿をした男は、主に賤業をなりわいにしていました。彼らは一人前扱いされない人たちで、幼童扱いされたことから、かむろと呼ばれたのかもしれません。
江戸時代にもザンバラ髪のかむろ姿の男がいました。非人身分の男たちです。彼らは髷を結うことを許されず、かむろ髪のザンバラを強要され、外出するときは被り物をかぶっていました。一人前でない人、つまり幼童、幼童がする「かむろ」、という三段論法です。
明治になって断髪令が出されたものの、なかなかザンギリが普及しなかったのは、ザンギリ頭がかむろ頭を連想させることから抵抗感があったのも一因のようです。
禿は「かむろ」に由来するように思われますが、字の構成からみるとまた違います。
禿の「禾」は穀物の意味、下の「ル」は人の象形です。穀物はつるつるして丸い。人の上に穀物は、頭髪がなくて穀物のつるつるいていることを表しています。つまり「禿」は「かむろ」ではなく、禿頭、「ハゲ」をさす字になります(『新漢語林』)。
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