キューティクルの状態を画像解析データから推定
Posted on | 3月 27, 2025 | No Comments
毛髪の損傷具合に関わるキューティクルの状態を画像解析データからダメージ度合を客観的に推定するプログラムを開発された。
中野製薬は、株式会社KNiTとの協業により、これまで研究員の手作業によって推定していたキューティクルの重なり枚数を、毛髪表面を撮影して得られる画像データから、AIによって簡単かつ高精度に推定するプログラムを新たに開発した、と2025年3月26日発表した。特許出願中。同社は、新たな美容価値を提供できるプログラム、としている。
開発背景
美容室では、お客さま一人ひとりの毛髪状態にあわせた施術をする必要があり、その判断は美容師さまの長年の経験に頼っていることも多くありました。しかし近年、毛髪に用いる薬剤や、美容機器などの発展に伴って施術履歴が複雑になり、お客さまの毛髪状態を診断し使用する薬剤を正確に判断することがこれまで以上に困難になっています。
このようなお客さまの毛髪状態には、「キューティクルの重なり枚数」が大きく関わっています。約0.5μm(マイクロメートル)と非常に薄いキューティクルは、毛髪表面に通常6~10枚重なって存在しており、日常的な外部からの刺激によりダメージを受けることで欠損し、徐々に剥離します。このため、その残存枚数は毛髪の健康状態(ダメージ度合)の指標の一つとなり、ヘアカラーやパーマなどの施術を行う際の薬剤の毛髪内部への浸透性にも関与します。
ダメージによる部位ごとのキューティクル枚数の違い
プログラムによって提供できる新たな価値
従来キューティクルの重なり枚数は、毛髪を裁断した断面図などから、研究員の手作業によって推定する必要がありました。そのため、1回に推定できるサンプル数に限りがあり、ダメージ度合の判断も属人的でした。
このような課題に対して本プログラムでは、毛髪表面を撮影して得られる画像データから、AIによってこれまで以上に簡単に推定することができるうえ、その精度も上がります。これにより、推定されたキューティクルの重なり枚数から毛髪のダメージ度合を算出することができるようになり、美容室でのヘアカラーやパーマなどの施術および生活者のセルフケアにおいて、客観的データに基づいた毛髪の状態に合わせて、より最適なアイテム選定を行うことが可能になります。
また、本プログラムを通じて集積された詳細データの分析を行うことで、現在の毛髪状態だけではなく、将来の予測などにも貢献できる可能性もあります。当社では、本技術を新たなサービスとしてご提供できるよう検討を進めるとともに、今後もお客さまが美容室において体験できる新たな価値の創造に貢献してまいります。
共同研究の内容
1.10~70代の日本人男女約150名から得られた毛髪試料の表面画像をマイクロスコープにて取得し、さらにその毛髪試料の断面を観察することでキューティクルの重なり枚数を計測しました。
2.取得した毛髪表面画像データについて、株式会社KNiTが持つAI画像認識技術を活用することで、各キューティクルの輪郭で区分される領域に基づいて特定される様々な特徴量(キューティクル領域の対角幅や外接する四角形の長辺短辺の違い、面積など)を算出しました。
さらに、当社の持つ毛髪科学に関する知見・仮説に基づき、キューティクルの重なり枚数の実測値と各特徴量との相関関係を確認したところ、ある特定の特徴量とキューティクルの重なり枚数が高い相関関係を有することを見出しました。
3.一連のAI画像認識技術および各種パラメータ値を用いることで機械学習モデルを作成し、毛髪表面を覆うキューティクルの特徴からキューティクルの重なり枚数を推定することが可能となりました。
AIモデルによるキューティクル領域の認識
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