育毛・発毛と「メカノバイオロジー」
Posted on | 7月 30, 2020 | No Comments
育毛メニューを導入している理美容店は多いが、その効果については科学的なエビデンスの面で説得力は正直いまひとつだった。
しかし近年、マッサージなどによる「力覚」が人体の生理や細胞に与える影響を科学する「メカノバイオロジー」という学問分野の研究が進み、発毛促進や抜け毛予防に効果があることが解明されつつある。
「メカノバイオロジー」とは、「生体における力の役割とその仕組みを明らかにする学問」という。力と生物に関連する学問は古くから行われてきたが、「メカノバイオロジー」は聴覚、触覚、内臓感覚や筋感覚などの機械感覚と、循環器学、運動生理学、マクロ解剖学などとの融合領域を研究する分野で、すでに理学療法、作業療法や整体療法などに応用されている、という。
理美容師が行うヘッドマッサージ(頭皮マッサージ)は、軽擦法や揉捻法などの技法を使い頭皮を刺激することで、頭皮の血行を促進し、毛髪を創生する毛乳頭の毛母細胞の働きを活性化する。その結果、発毛を促進し、抜け毛を防ぐといわれ、古くから行われてきた。しかし、その効果は個人差があり、また科学的なメカニズムは証明されていない。
頭部への加温を行うヘッドスパなども、頭皮の血行を促進し、心身をリラックスさせる効果があり、これも発毛や脱毛防止につながる可能性が期待される。
これら理美容店で行われている、ヘッドマッサージやヘッドスパのメニューの効果が「メカノバイオロジー」という、新しい研究分野で科学的に解明されれば、理美容店の強力な高付加価値メニューになる。
参考までに「メカノバイオロジー」とは
分子、細胞内小器官、細胞や組織を取り巻く力学的なミクロ環境や微小刺激に対して、分子活性、細胞内構造、細胞分化、細胞運動などの生理機能や制御機構が応答・適応することが明らかになりつつある。すでに確立している生体力学(バイオメカニクス)に対して、近年の光学顕微鏡技術や遺伝子工学の進歩によって、細胞・分子レベルに着目した細胞生物学という面が強い。医学・医療応用につながる可能性をもつ研究領域でもある。
(実験医学増刊 Vol.31 No.2/羊土社)
タグ: ヘッドマッサージ, メカノバイオロジー, 髪にまつわるエトセトラ