ミルボンと大阪公立大学が育毛成分を確認
Posted on | 10月 31, 2023 | No Comments
トウキ根エキスとモウソウチクたけのこ皮エキス配合の頭皮用美容液に育毛効果のあることが科学的に明らかにされた。
ミルボンは、育毛成分の探索のため、ヒトiPS細胞を活用し、毛髪関連遺伝子の発現上昇を指標とした育毛研究を行い、効果成分を見出した。この成分は大阪公立大学と同社の共同研究部門である『薬物生理動態共同研究部門』(特任教授・小澤俊幸)において、ヒト毛包組織にて毛髪の伸長を促進させることを確認した。
研究成果は2023年9月4日~9月7日にスペイン・バルセロナで開催された「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会 2023」で発表。口頭発表応用部門におけるトップ10に選出さた。
ミルボンと大阪公立大学が2023年10月23日発表した。
【研究背景】
毛髪は頭部の保護などの機能を有するだけでなく、外見にも大きな影響を与えます。そのため抜け毛や細毛に悩む人も多く、育毛研究が広く行われています。毛髪は、毛根部において髪のもととなる毛母細胞が分裂・増殖することで徐々に伸長します。そのため、これまでにも毛母細胞を活性化させる、あるいは毛母細胞へ栄養を届けるための血流を改善する、などの着眼で育毛研究が行われてきました(図 1-A)。
一方で加齢による変化として、毛母細胞自体が生まれにくくなり、抜け毛や細毛化が進行することも報告されています。
毛母細胞は毛包幹細胞*4 が分化(特定の機能を持つ細胞に変化)することで生まれます。そのため、毛包幹細胞から毛母細胞への分化を促進する成分を発見できれば、これまでとは異なる新たなメカニズムでの育毛効果が期待できます(図1-B)。しかし、毛包幹細胞は取り扱いが難しく、そのものを用いた育毛研究は困難でした。そこで今回、毛包幹細胞と同じく幹細胞*5 の一種であり、近年になって再生医療の分野で研究が進められている“ヒト iPS 細胞”を活用し、毛髪形成に関する遺伝子の発現量を指標とした育毛成分の探索に挑戦しました。
【研究の成果】
1.ヒトiPS細胞を活用し、毛髪形成に関する遺伝子の発現を上昇させる2種の植物エキスを選定
毛包幹細胞から毛母細胞への分化促進効果が期待できる成分を選定するために、特定の刺激により遺伝子が発現し、分化してさまざまな細胞になりうるヒト iPS 細胞を活用しました(図 2-A)。ヒト iPS 細胞に複数の植物エキスをそれぞれ添加し、その後の遺伝子の発現量を確認しました。この手法により、毛髪形成に関する遺伝子(KRT31)の発現量を上昇させる 2 種の植物エキスを選定しました(図 2-B)。
2.ヒトiPS細胞を用いて選定した2種の植物エキスが、実際に毛髪に対する伸長効果を有することを確認
トウキ根エキス、モウソウチクたけのこ皮エキスの実際の育毛効果を確認するため、大阪公立大学との共同研究部門『薬物生理動態共同研究部門』において、手術後の余剰頭皮から単離・器官培養*6 した毛根部の組織を用いた検証を行いました。その結果、トウキ根エキス、モウソウチクたけのこ皮エキスは毛髪を伸長させることがわかりました(図 3)。この結果より、ヒト iPS 細胞を活用した育毛成分選定手法の信頼性が確認されました。
本研究は倫理審査委員会*7 の承認を得て行いました(大阪公立大学医学研究等倫理審査委員会承認番号2020-032)。また、倫理審査委員会で承認された同意書に基づき、インフォームド・コンセント*8 を得て試験を行いました。
3.トウキ根エキスとモウソウチクたけのこ皮エキス配合の頭皮用美容液を用い、連用使用での効果を確認
トウキ根エキス、モウソウチクたけのこ皮エキスを配合した頭皮用美容液を毎日使用して頭皮ケアを行った結果、細毛の改善や、抜け毛の減少効果が確認できています(図 4)。さらに、分け目が目立たなくなった実効例、生え際の産毛の増加がみられた実効例も確認されました(図 5)。
本研究は倫理審査委員会の承認を得て行いました(ブレインケアクリニック倫理審査委員会承認番号BCC230427-2)。また、倫理審査委員会で承認された同意書に基づき、インフォームド・コンセントを得て試験を行いました。
【今後の展望】
育毛作用メカニズムのさらなる解明、および高機能頭皮ケア製品の開発を目指し、研究を進めてまいります。
《用語解説》
*1 ヒト iPS 細胞(induced Pluripotent Stem cell:人工多能性幹細胞)
ヒトの細胞に特定の遺伝子を導入することで、人工的に多能性(あらゆる種類の細胞に変化する能力)と自己複製能(無限に増殖する能力)を付与した細胞。
*2 薬物生理動態共同研究部門
2022 年 7 月 1 日に、株式会社ミルボンと大阪公立大学が共同で設立した研究部門。頭皮や皮膚に関連するメカニズム解明や有効性研究に取り組み、髪や頭皮、肌に悩みのある方の QOL の向上に繋げられるような社会貢献性の高い研究活動を進めることを目的としている。
ミルボン、大阪公立大学と共同研究部門『薬物生理動態共同研究部門』を開設~毛髪・頭皮・皮膚の基礎基盤研究強化を目指す~|株式会社ミルボンのプレスリリース (prtimes.jp)
*3 IFSCC: The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
国際化粧品技術者会連盟。1959 年に設立された国際的な化粧品技術者会。81 の国や地域が加盟し、16,000 名以上の会員から構成されている。各国や地域の化粧品技術者が一堂に会して最新の研究成果を発表・討論する国際学術大会を開催している。国際学術大会では、優秀な発表演題には賞が与えられる。
*4 毛包幹細胞
毛包部の中ほどに存在している幹細胞の一種。毛母細胞等に分化する細胞。
*5 幹細胞
多能性(あらゆる種類の細胞に変化する能力)と自己複製能(無限に増殖する能力)を持った細胞。
*6 器官培養
取り出したヒト等の生体組織を、培養液を使用して体外で培養する方法。
*7 倫理審査委員会
被験者の尊厳や人権を守るため、臨床研究が人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に基づき適切に計画・実行されるよう審議する委員会のこと。倫理指針は、世界医師会により作成・採択されたヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)に従う。
*8 インフォームド・コンセント
実施される研究の目的・方法・リスク等について、被験者が研究実施者から十分な説明を受け、それらを理解した上で自らの意思に基づいて研究の実施に同意すること
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