加齢によるくせ毛の発生要因が判明
Posted on | 10月 17, 2022 | No Comments
くせ毛には先天的なものと加齢によりものがあるが、加齢によるくせ毛の発生要因は、複数の毛母細胞が融合し、一つの毛包が形成されるのが原因であることがわかった。
中野製薬が2022年10月17日発表した。
同社と関西大学の共同研究による。
くせ毛の発生要因を調べることを目的に同一人物の「直毛」と「うねり毛」を引き抜き、毛根部分の違いについて観察したところ、後天的にうねった毛髪では、別々の毛髪になるはずであった毛髪の元となる細胞“毛母細胞”が融合し、一つの毛髪を形成していることがわかった。
さらに、「うねり毛」では毛根の形成に関わる物質(タンパク質)の量にも違いが見られることをつきとめた。
これらの研究成果は「第32回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会2022ロンドン」で発表された。
同社は「今回明らかになった毛母細胞の融合に関して更なる研究を進め、後天的な毛髪のうねりの悩みを解決できるヘアケア商品の開発につなげていく」としている。
以下、同社の発表内容
・発表タイトル
「後天的な要因によるうねり毛の抜去毛包組織に見られる形態学的特徴に関する検討」
発表者:中野製薬株式会社 堀部一平、石原良二、中野孝哉
関西大学 化学生命工学部 柯兪如、泉沙良、住吉孝明、長岡康夫
・研究の背景
毛髪の外観は、形、色、光学特性など多くの要素によって変化し、その人の見た目の第一印象に大きく影響します。 その中のひとつである「毛髪のうねり(クセ)」は、カール毛のような先天的なうねりの他に、加齢などの後天的な要因によっても生じると考えられていますが、そのメカニズムについてはよく判っていません。そこで、本研究では、同一人物の直毛とうねり毛の毛包組織の形態学的な違いについて検討を行いました。
・研究の成果
同一人物の頭部から直毛とうねり毛を引き抜き、付着した毛包組織とともに毛髪をパラフィン樹脂に包埋しました。その後、ミクロトームを用いて連続した毛髪横断面の薄切切片を取得し、毛包組織の形態学的特徴の違いについて比較を行いました。その結果、うねり毛では複数の毛母細胞が融合し、一つの毛包および毛髪を形成していることが判りました。
次に、免疫組織化学染色により、組織の分化に関わる因子の発現を確認したところ、うねり毛の毛包組織(内毛根鞘)では、ケラチンタンパク質の一種である“KRT71”と、タンパク質のジスルフィド結合の形成に関与する“CUTC”の発現が不均一になっていることが判りました。これは、一つの毛包内において組織の分化段階が部分的に異なることを示唆しており、複数の毛母細胞が融合し一つの毛包を形成していることを裏付けているものと考えます。
さらに、生体組織の発生・分化・細胞極性などに重要なシグナル伝達経路の一つである“Wntシグナリング経路”に関連する“Wnt5a”の発現量を比較したところ、うねり毛では部分的に減少している様子が捉えられました。一方で、“Wntシグナリング経路”の阻害因子である“DKK1”は、うねり毛で増加していることが判りました。すなわち、“Wntシグナリング経路”の不調が毛母細胞の融合に関与しているのではないかと考えられます。
通常、一つの毛穴からは1本~4本の毛髪が生えており、毛包ユニットと呼ばれています。毛包ユニット内のそれぞれの毛髪は一定の距離を保ち、独立したヘアサイクルに従って生え変わっています。しかし、今回の結果から、何らかの後天的な要因によって毛包ユニット内で毛髪の元となる複数の毛母細胞が近づき、融合することで後天的なうねり毛が生じると考えられます。
タグ: くせ毛, 中野製薬, 研究