ヘアサイクルの退行期をコントロール
Posted on | 2月 14, 2021 | No Comments
ヘアサイクルに着目した毛髪研究は世界各国で行われていますが、千葉工業大学大先進工学部 生命科学科の坂本泰一教授らのグループは、ヘアサイクルの退行期へのトリガーとなるFGF5という線維芽細胞増殖因子をコントロールするRNAアプタマーの人工生成の開発に成功しました。将来、脱毛防止、脱毛予防の育毛剤の商品化が期待されます。
同大学が2021年2月5日発表。
ヘアサイクルに着目した毛髪研究は、欧州などではメリノなど羊毛の研究から行われています。羊をはじめ哺乳類の多くは、夏毛と冬毛に生え変わり体温を調節しています。皮膚には温度センサーの機能があり、気温の変化、つまり季節に応じて一斉に獣毛は抜け、あらたな獣毛へと生え変わります。これが制御できれば製品価値の高い冬毛が多く刈り取れます。羊にとっては迷惑な話でしょうが。
ヒトの場合は、進化の過程で発汗作用の機能を得たことで、体毛がいっせに抜け落ちて生え変わるという生理現象はなくなりました。しかも太くて硬い獣毛から体毛へと変化しています。成長期、退行期、休止期というヘアサイクルによって毛は生え変わりますが、その退行期のスイッチとしてのトリガー(脱毛シグナル)となるのが、FGF5というタンパク質です。
成長期の終わりに、外毛根鞘でFGF5が生産され、これが毛乳頭のFGF受容体に結合することで脱毛が起こるといわれいます。研究グループは、SELEX法という方法で7種類のRNA アプタマーを得たいいます。こららのRNA アプタマーはFGF5によって誘導される細胞増殖を効果的に抑制することも解明しました。しかも、FGF5以外のFGFには結合することはないので、副作用がないことも確認したといいます。
脱毛シグナルを抑え抜け毛が抑制できれば、毛髪がより長期間頭皮に留まり、より長く成長し続けることができます。結果、育毛剤としては有力な商品になりそうです。
リリースには、FGF5のはたらきを示すうウサギとアンゴラウサギの写真(上)が掲出されていますが、動物の研究成果を応用したのかは不明です。
この研究の詳細は、Springer Nature が発行する学術雑誌ScientificReports に2月3日付けで掲載されたとしています。
なお、研究グループは、千葉工業大学、北海道医療大学、横浜国立大学と株式会社アドバンジェンという育毛化粧品メーカーです。
(情報/プレスリリース)
千葉工業大学のニュースリリース
https://www.it-chiba.ac.jp/topics/pr20210205/
タグ: RNAアプタマー, ヘアサイクル, 髪にまつわるエトセトラ