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理美容業界 <業界展望 2012-2013>

Posted on | 12月 30, 2012 | 1 Comment

第二次安倍政権の誕生で幕を閉じた2012年(平成24年)。日本経済のデフレからの脱却を最優先課題に掲げているが、2012年の理美容業界は長期デフレ経済下、他業と同様縮小トレンドにあった。そして、2013年は?

「理美容ニュース」に掲載した記事を基に、2012年までの理美容業界の動向をまとめるとともに2013年を展望した。

【縮む理美容マーケット/2012年は推計2兆2千億円に】
2012年11月29日に公表された「サービス産業動向調査」(総務省)平成23年によると、2011年の理容・美容を合わせた理美容マーケットは2兆3千億円で、前年に比べ1100億円(4.7%)ほど縮小した。マーケットに占める理容・美容の比率は、おおよそ理容3:美容7で、美容の落ち込みが大きく響いた。

同調査が開始された2009年以降、理美容マーケットは縮小トレンドにあり、2012年も縮小したと予測される。当メディアでは2兆2千億円程度にまで縮小したと推測している。
2013年も日本経済が回復したとしても、その効果が理美容に波及するのに時間がかかるため、縮小トレンドを基調に推移するものと思われる。

【縮小トレンドに入った美容業界/2012年は1億5千億円に】
「サービス産業動向調査」(総務省)平成23年のデータから、2011年の美容所数は17万5千店で、2009年以降微減している。「経済センサス」(総務省)平成21年(2009年)では17万6千店で前回調査の平成18年比86店の増と横バイだった。美容所数が微減したとはいえ、2012年も国内では最多事業所の業種(小分類)であることには変わりない。
同調査によると、2011年の従事者数(美容師数)は43万6千人で、2009年から1割近く減った。さらに、美容の売上は2011年1兆6千億円で、2年間で1割以上縮小した。2012年は1兆5千億円程度と当メディアでは推計している。

以上のデータからこれまで拡大を続けてきた美容業界は2009年を境に縮小に転じ、2012年も縮小したものとみられる。
家計調査(二人以上の世帯)では、カットの利用回数、1回当たりの支払金額が減少傾向にあり、消費者の低価格志向、買い控えが続いおり、美容の売上に影響したようだ。
2013年も美容業界の縮小トレンドは続くものと思われる。

<註>
2012年10月に発表された厚生労働省の衛生行政報告・平成24年3月末では美容所数、従事者数とも増えているが、経済関連指標では通常「サービス産業動向調査」「経済センサス」を使用する。
なお、衛生行政報告は届出数をカウントするが廃業の未届が指摘されるなど、過大にカウントされる傾向がある。逆に経済関連指標では商業施設内の個々事業所がカウントされないなど過小にカウントされる傾向がある。

【低位で推移する理容業界/美容の半分以下の規模】
「サービス産業動向調査」(総務省)平成23年によると、理容マーケットは6600億円で美容の半分にも満たない。事業所数は11万6千店と美容の三分の二ほどと少ないのに加え、1店舗当たりの売上が570万円と美容所の6割ほどしかないためだ。
同調査では、2009年から売上、従業者数、事業所数など多少の増減はあるが、ほぼ横バイで推移している。2012年も低位での横バイ傾向は変わらないと当メディアでは推計している。

都市別料金調査(総務省)のデータでは2002年頃より理容料金は3500円前後で推移していることから、この頃より現在に近い状況だったと推測される。
家計調査(二人以上の世帯)の理容支出では、利用回数は増加する傾向が見られるが、1回当たりの支払金額は低下していることから、1000円バーバーが定着し、その利用者が増えていることがうかがえる。

2013年も、ここ数年来同様、低位で推移することが予想される。しかし、理容業界では高齢化が進む一方、新規参入者が少ないことから、マーケットは近い将来、一段と縮小するものと思われる。

【ようやく理美容業界もネット時代の端緒に】
他業種と比べると、インターネットやパソコンの利用が遅れている理容美容業界だが、手軽に使えるipadやスマートフォンなどが普及し、利用者が増え始めてきた。これらのツールを使って、フェイスブックなど手軽に利用できるSNSを通じ店の宣伝や情報発信する人も増えてきた。

2012年、楽天がサロン検索市場に参入するなど、サロン検索サイトを通じて積極的に情報発信するサロンも増えている。これまでは美容業界誌にヘアスタイルを発表するのが常だったが、BtoCサイトやSNSを通じてヘアスタイルを発表し、集客に結びつけているサロンも目立つ。

また、BtoBでは、求人求職サイト、流通サイト、技術テクニカルの動画サイトをはじめ積極的に専門サイトを活用する理美容師さん、サロンオーナーが増えつつある。
パソコンにしても2012年はクラウドが普及してきた結果、従来のパッケージ型ソフトから安価な費用で利用でき、しかも更新などが自動でできるクラウド型の管理ソフトが登場。2013年は普及するものとみられる。

インターネットやパソコンは理美容師さんの年齢的な問題、機械類が苦手な人が多いこと、また業界ディーラーの強い営業力などもあってなかなか普及しなかったが、2012年はようやく理美容業界もネット時代の端緒に立った感がある。2013年は普及が加速するものと思われる。

【変わる? 衛生行政】
民主党政権になって行われた事業仕分けで廃止判定された補助金助成事業が名称を変えてそっくり復活したのには驚いたが、それは衛生行政だけではなかった。2人以上の理美容店に義務づけられていた管理理美容師も、仕分けの指摘を逆手に1人以上と規制強化に、天下りの根絶も一部阻止するなど、官僚の底力を見せつけられた2012年(2011年も含む)だった。

とはいっても、補助金助成事業は評価審査会で、事前事後の評価を受けるなど、条件が整った面もある。その補助金助成事業は、2012年は復興財源がついたが、財政難の折、来年度以降は減額される流れである。また、政府支出で最多の生衛貸付(日本政策金融金庫)の利子補給は不況の影響を受けて、長期にわたり貸付そのものが減少している。

生衛行政がいまの形になったのは、昭和32年に制定された「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」によるが、制定から半世紀以上が経って、対象業種、組合・連合会との行政の関係など、根本から見直す時期にきているといえる。理容美容の両業はまだいいが、他業では組合組織が確立されていない業もある。50年以上経ってこれではやはり、この振興制度そのものが問われても仕方ない。

理容美容などを所管する厚生労働省の生活衛生課は、根源的には憲法25条に基づく行政機関で、その根本に立ち返り、国民の衛生、健康で文化的な生活をおくる方策に絞り、衛生行政に徹するべきだ。
そして、これらの業に携わる人、事業所が国に占める割合(理美容店は4.8%になる。生衛業では2割近くを占める)にくらべると、投入される予算は歳出全体の0.01%にも満たず、少なすぎる。美容をはじめ、飲食、ホテルなど成長する可能性が高い業種は、衛生行政とは別に、国が進める成長戦略に位置づけてもおかしくない。事業所数が多いだけに地域活性化や就労先の拡大の面からも国が振興を図る価値はある。

2012年、行政関係で注目したいのは、中央官僚への批判が地方の役人から起こりつつあることだ。地方への権限移譲が進む中、地方役人は議会の議決を経ない「通知」を地方に押しつけることに対して反駁している。「通知」の法的効力が問われている。
理容美容に関する「通知」も数多く発布されており、地方分権が進む中、「通知」の扱いによっては、理容美容業界が変わる可能性がある。

【TPPと理美容業界、根底から変わる可能性】
TPPというと、輸出入の関税の撤廃ばかりが報道され、国内産業の理容美容業界には無関係と思われがちだが、業界を根底から変革する可能性を秘めている。

世界には大規模なサロンがあり、日本への進出を図っている。たとえば米国のレジスなどは世界に1万5000サロンがあり、過去にも日本へ進出を図ったが、他国ほどの実績を残していない。その理由として、日本の理容師美容師国家資格の存在が指摘される可能性がある。

レジスは主に投資家を集めフランチャイズで事業を展開している。事業の中には理容師美容師の育成も含まれる。レジスが進める事業展開の障害になるのが国家資格だとしたら、撤廃に向けた動きをするはずだ。業務独占の理容師美容師の国家資格があるのは日本ぐらいで、当然、加盟国内での平準化が求められよう。そして、条約は国内法より優先される。

万が一、そうなったら理美容業界は大きく変わることになる。少なくとも養成施設は大きな影響を受ける。TPPの内容は不明な点も多いが、2013年はTPPの動きを注視しなくてはならない。

*TPP:環太平洋戦略的経済連携

【不況とはいえ廃業者が多すぎる美容師】
「ザルで水を掬う」のたとえがあるが、美容業界では掬った水より多い水が漏れだしている。新規に美容師試験に合格した人数と廃業した人数をみると、最新のデータである2011年は1万8524人が美容師試験に合格し、3万6400人が転廃業した。前年の2010年は新美容師が1万9224人に対し、転廃業者は5万人を超す。(データは、総務省のサービス産業動向調査と理容師美容師試験センター発表の試験結果による)。2012年も同様の傾向だったと推測される。
これでは美容業界の先細りは必至だ。
大量の美容師が業界を去る理由は、社会保険や労働保険などの不備や、労働条件がよくないこともあるが、それよりも美容業の仕事の収益性に問題があるように思える。
それにしても、毎年これだけの人が仕事を辞めるのは、やはりこの業のどこかに欠陥があるのかもしれない。

【理美容ビジネス動向】
・低価格志向の流れ(10分1000円カットに代表される新業態店の定着)
家計調査(二人以上の世帯)をみると、パーマを除く、理容、カット(美容)は1回当たりの支払金額が減っており、消費者の低価格志向は歴然としている。日本経済がデフレ下にあっては当然の流れだろう。

理容は利用回数は増えているが単価が安くなって売上げが減少。カットは利用回数、単価とも下がり、売上は大きく減少している。パーマだけは支払金額は上昇傾向にあるが、利用回数が大きく減って、トータルで売上は減少している。

2012年、QBカットが500店を突破。同様の業態のサロンは増え、これら低価格店は日本の消費者に定着したといえる。利用者の声は、料金の安さはもちろん、利用しやすさ、技術など満足度は高い。男性客だけでなく、子供客や女性客も散見されるなど、2013年もますます増えると予想される。
これらの業態店は男性が主要客で理容店に影響を与えていたが、これからは美容店へも影響が及んでいくものと思われる。

・パーマの嗜好品化
パーマの売上減少がいわれて久しい。なにしろ10年間でパーマ用剤の出荷量は半減した。パーマは高料金メニューなので、パーマの落ち込みは美容室の売上げを押し下げる要因の一つになっている。全美連では3年前よりパーマ復権運動をはじめたが、成果はすぐにはでるものではないので、今後のデータを待ちたい。

その一方で、家計調査(二人以上の世帯)のデータでは、パーマの嗜好品化をうかがわせる結果がでている。
普通、需要が減れば料金は下がるのだが、パーマは逆に消費者の支払金額が上昇している。同時に利用回数は大きく落ちこんでいる。パーマをかける人は少ないが高い料金も惜しまない、ということになる。

この傾向は2013年も続くものと思われる。高料金を支払うパーマ客を得意客にしている美容店は売上げの伸長が期待できそうだ。

・高まる高齢者ニーズ
日本の人口の23%が65歳以上の高齢者で(2010年、国勢調査)、しかも高齢者の人口に占める割合は増え続け、2012年には約4人に1人が高齢者だ。しかも、高齢者は金持ちが多い。日本の金融資産1500兆円のうち6割を保有する、といわれている(高齢社会白書より、60歳以上の資産)。

富裕層の高齢者をいかにして呼び込むか、理美容に限らずサービス産業のテーマになっている。前述の「パーマの嗜好品化」も高齢者に起因している可能性が高い。
高齢者は金もあるが、時間もある。時間と金のかかるサービスを選択できるのは高齢者しかいない。
高齢者は少し若く見られたい、高齢者は疲れやすい、高齢者は孤独、、、などなど、高齢者の特長を分析して、個々のニーズにあったサービスを提供することが、2013年、理美容店にも求められている。

・福祉理美容の可能性
前述の高齢化社会の到来とも関連するが、理美容ビジネスでも福祉がキーワードの一つになっている。高齢者をはじめ障がい者など介護が必要な人を対象にした理美容サービスの提供は社会的な需要があり、すでにビジネスとして展開している理美容事業者は少なくない。

福祉理美容と一口でいっても多様なモデルがある。店舗をバリアフリーにして要介護者の受入れ体制を充実させたり、介護施設や在宅介護している家庭に出向いて、理美容施術をすることも行われている。その場合、介護の知識を身につけていればそれにこしたことはない。
さらに、地域に密着している理美容業の特性をいかして、理美容を核にした福祉施設を運用して成果を上げているNPO法人もある。

福祉理美容は、利益だけを追求するわけではなく、ボランティアの精神が求められるが、理美容業の社会的な価値を高めるためにも、高齢化社会を迎えたいま、積極的に対応したい分野である。

・新ビジネス 台頭の芽(シェアサロン)
面貸しサロンは従来からあるが、営業面でのトラブルも聞き、日本では欧米ほど普及していないようだ。面貸しをさらに一歩進めた時間貸しのいわゆるシェアサロンが2012年、話題になった。
美容室所有者が使用してない椅子を時間で、美容師に貸すシステムで、貸し手にとっては資産の有効利用、借り手も安価で都合のいい時間だけ利用する。2012年にはシェアサロンを仲介するサイトも誕生。さらに、シェアして利用することを前提にしたシェア専用のサロンも生まれた。
すぐにの独立が厳しい美容師さんにとっては、好都合なシステムといえる。
面貸し、シェアサロン、新しい形態の理美容ビジネスが2013年、どうなるのか注目したい。

・まとめ
デフレ経済下、理美容マーケットも縮んでいる。理容は低位で横バイだが、美容は年5%ほど縮小した。
この状況で、売上が前年比ゼロを維持できた美容店は優秀賞、2,3%の減なら努力賞ものだ。
上場している大手サロンは、株主への責任を果たすため最大限の経営努力をしているはずだが、2012年の決算では、既存店ベースで前年比プラスにはならない。来客数の減、客単価の低下による。
一般の美容店で、経営努力をしなかったら、7,8%は落ちこんでもおかしくない。それほどいまの不況は深刻といえる。
そして、この不況は2013年へと続く。
2012年末、民主党に代わって自民党が政権に復帰し安倍政権が誕生した。経済の再生を最優先課題にしているが、成果があったとしてもその効果が理美容に及ぶのは1年以上先になる。理美容業の2013年は現在の不況が続く。

【巨匠逝く】
2012年5月、ヴィダル・サスーン氏がロサンゼルスの自宅で逝去。84歳だった。
1963年にシザーズカットによるジオメトリックなヘアスタイルを発表し、その斬新さは世界の理美容業界を驚かせた。
日本の理美容師さんも渡英しブラントカット技法を学び、瞬く間に国内に広がり、今のカット&ブローの隆盛につながっている。
当時、故人の名を付けたカット教本の編集を手伝い、「オンザベース」など怪しげな和製英語を編み出した思い出が懐かしい。
著名な人だったが直接面識のある人は多くはなく、なおさら巨星に見えたのかもしれない。

2012年、国内ではOMC92ヘアワールド東京大会を成功させた松本善重元全日本美容業生活衛生同業組合連合会理事長(89歳)、トニーー&ガイジャパンの雑賀健治氏(63歳)、理容教育に尽力した吉田實元国際理容美容専門学校理事長(100歳)、現在の化粧法を提唱した高賀冨士子元資生堂美容学校校長(88歳)らが逝去された。合掌。

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タグ: 市場動向, 業界展望, 理美容ニュース, 美容ニュース

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Comments

One Response to “理美容業界 <業界展望 2012-2013>”

  1. 1000円カットが美容院よりも儲かるワケ
    7月 1st, 2013 @ 3:11 PM

    [...] 出典理美容業界 <業界展望 2012-2013> | 理美容ニュース [...]

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