理容、理髪、美容
Posted on | 10月 18, 2020 | No Comments
言葉は時代とともに変遷しますが、「理容」という言葉もそうです。「理容」を『広辞苑』で引くと、最初に出てくるのが「理髪と美容。」。ついで「整髪・ひげ剃りなどをして頭や顔をきちんと整えること。」とあります。
『広辞苑』は、その言葉の原初的な意味合いから順番に記載するので、「理容は、理髪と美容」が第一義になります。いまの理美容業界の業界人にとっては、少し違和感があるかもしれませんが、『広辞苑』は一般の人たちを対象にした辞書なので、当然の解釈といえます。
「整髪・ひげ剃りなどをして頭や顔をきちんと整えること。」も、整えるのは一般の人たちを含んでいて、理容師に限定したものではありません。
理美容業界も以前は『広辞苑』同様、「理容は、理髪と美容」と解釈していました。
昭和22年(1947)に公布された「理容師法」は、第一条で「この法律で理容とは、理髪及び美容をいう。」と定義しています。当時の理美容業界は「理容」という言葉をいまよりも広く解釈されていました。
「理容」という言葉を使って、遠藤波津子さん(初代))が明治38年に東京・京橋に「理容館」という店名で出店しています。「理容館」では、女性の洋髪や化粧、美顔術などの施術をしていました。この「理容」という言葉は、明治後期には使われていたようです。「理容」に近い言葉に「整容」があり、当時の業界ではほぼ同義で使われています。
「美容」という言葉は、いまでは「超」がつくビッグワードですが、明治後期に一般の婦人雑誌などが使いはじめた、といわれています。
大正2年には「美容講習所」という美容技術を伝授する任意の学校が設立されています。同11年には「美容世界」という業界雑誌が誕生しています。サロンとしては同12年に東京・丸ビルに出店した山野千枝子さんの「丸ノ内美容院」があります。
「美容」という言葉は、業界では日本髪の髪結と対比する言葉として、西洋髪の美容技術として使われはじめました。
「理髪」という言葉は、明治維新の断髪令で誕生しました。西洋理髪といってましたが、その後、理髪、理髪師が広く使われるようになります。
前述の「理容師法」第一条で、理容は理髪と美容の両職を指しましたが、昭和25年に「理髪業」から「理容業」に職名が変更され、現在に至っています。職名が変更された翌年、理容師法は、理容師美容師法に改正され、この改正でインターン制度などが導入されます。
職名が「理髪」から「理容」に変更された背景には、法律の制定があったからでしょう。
業界内では「理容」が定着していますが、いまだに「理髪」、「理髪業」と職名を表記するメディアもあり、また一般の人は「理髪」、「散髪」、「床屋」の俗称も多く使われています。地域性もあり、昭和の時代までは、散髪・散髪屋は西日本、床屋は東日本で多用されていました。
理容職は、人々にとって慣れ親しんだ身近な職業ともいえます。
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