理美容サロンの倒産件数が過去最多に
Posted on | 1月 15, 2020 | No Comments
昨年(2019年)、理美容業の年間倒産件数は過去最多だった。東京商工リサーチと帝国データバンクでは理美容業の定義が違い、件数も違うが過去最多は同じだ。
負債を抱えての倒産で、小規模零細事業者の多い理美容業の中では規模の大きめなサロン企業の倒産数になる。複数店舗を展開しているので、東京商工リサーチは閉鎖された店舗数は千店を超えるとしている。倒産以外にも負債のない廃業も多いと指摘している。
倒産理由はいくつかあり、複合的に重なり合って倒産に至ったのだろう。
倒産の背景には、まず理美容業界がオーバーショップ状態にあることがある。業界では人手不足というが、理美容師数と人口をみれば理美容師過剰といえる。オーバーショップ、オーバーパースンなのが理美容業である。
また、いまの日本経済が低迷していることも理由としてあげられる。給与の伸びが低く、消費者は買い控え、コストパフォーマンスを重視する。同程度のサービスなら低価格、低料金を選択する。
この消費動向で恩恵をこうむっているのが、カット専門店やヘアカラー専門店のいわゆる、お値打ちメンテナンスサロンだ。近年メンテナンスサロンは都市部で急増し、その結果一般のサロンの来客数は減少している。
倒産件数が増えた理由の一つとして、東京商工リサーチ、帝国データバンクとも技術者の確保難をあげている。
理美容業は究極の労働集約産業といえる。一人の技術者が一人の客に相対して施術するのが基本だ。売上を倍にするには、技術者を倍にする必要がある。もしくは客単価を倍にするか、給与などの経費を大幅に圧縮するしかない。
一人のスタイリストが何人かのアシスタントを使って同時に複数の客に施術して売上を増やすこともできるが、限度がある。
技術者が辞めれば売上が減る。倒産したサロン企業の中には、技術者の確保ができずに、あるいはアシスタントの育成がうまくいかずに売上が縮小し倒産に至ったケースがある。
サロン企業にとって人手不足の解消は成長を続けるために避けて通れない。業界全体でみれば技術者は決して不足していない。いまいる技術者が辞めないようにすればいいだけの話だ。
ところがスタイリストに育てた技術者も40代までには大半が辞めてしまう。これでは慢性的に新規募集を続けなければならない。募集しても集まらなければ、店舗の閉鎖、企業規模を縮小をせざるを得ない。ひいては倒産につながる。
肝要なのは定年まで働ける環境を整えることだ。ところがこれが難しい。
サロン企業の中には、暖簾分けで技術者の独立を後押しする制度を取り入れれている企業もあるが、すべての技術者がフランチャイジーになれるわけではない。
サロン企業としても独立した技術者や辞めた技術者の穴を埋めるために新人の募集を続けなければならない。
これからの企業の定年は65歳、70歳になるだろう。この年齢まで雇用を続けるためのアイデアの一つとして複数のブランドサロンを展開することが考えられる。30代ぐらいまでの年齢の技術者がふさわしいサロンから、40代以降の中高齢技術者のほうがふさわしい形態のサロンなどタイプの違ういくつかのブランドサロンを展開するのである。
理美容業界はおしゃれでキレイなイメージがあり若者にとって人気職種である一方、若年技術者やアシスタントを低賃金、一般企業よりかなり見劣りする労働環境で働かせ、そして使い捨てるというブラックなイメージもある。その原因はサロン企業の経営にもある。
2019年、年間倒産件数が過去最多になった理美容業界だが、正常な雇用ができない、力のないサロン企業が業界から淘汰されたともいえる。理美容業界全体からしたら15%ほどに過ぎないサロン企業だが、2020年、サロン企業は経営のありかたを根本的に見直し、理美容業界を目指す若者を落胆させない夢のある業界にしてほしい。
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