「課長通知」の法的拘束力
Posted on | 8月 20, 2012 | No Comments
「課長通知」といえば、法律ではないが、法律に準ずるものと理解していたが、その効力に疑義が出されている。
しかも、疑義を出しているのが、通知を出すのと同じ公務員だから、時代は変わった。
まつ毛エクステンションを審議する衛生問題検討会では、昨年来、まつ毛エクステの美容師法関連のほか、旅館業法関連、建築物衛生法関連の3つのテーマを審議している。その旅館業法関連で宿泊の特区申請にからみ、申請した兵庫県の担当主務課長から「課長通知」の効力について、中央からの「お願い程度」との理解でいいのでは、といった意見が出された。
以前、といっても生活衛生課を環境衛生指導課といった遠い昭和の時代のことだが、小紙が同課の法務担当官に問い合わせたところ、「通知は、法律、政令、省令ではないが、それらの法律を補完するもので、法律に準ずる」との回答を得た。「法律ではないが法律に準ずる」とは分かったようで、曖昧としている。法曹の書を調べたら「それ自体が法的拘束力は持たないが、法規範と一体となって事実上の法的拘束力を持つ」とあった。
あれから四半世紀以上が過ぎ、地方分権のかけ声のもと、地方への権限移譲が進んだ。中央からの「通知」というお達しも軽くなった? 法律でないので、直接的な罰則はともなわない。だったら子細なことは、地方は地方の事情に合わせて勝手でいいのでは、という意見が出てきても不思議ではない。
まつ毛エクステでは、業界団体がまつ毛エクステに特化した資格制度の創設を求めたが、生活衛生課がまとめた論点整理では、「法律改正を必要とするもので、国民的な合意が必要である」とし却下した。
その一方で、「課長通知」で、まつ毛エクステは美容師の業権とした。これは首から上の施術は美容師の業務範囲とする慣例があるからだが、美容師法に首から上、云々の記載は見当たらない。
国民的な合意が不必要な「課長通知」は便利な手段であり、中央の官僚にとっては、その権力の拠り所ともいえる。その「通知」を「お願い程度」と解釈されては、担当課長が色をなすのもわかる。改めて文書で回答するとしたが、ことがことだけに半端なものは出さないだろう。
とはいえ、「課長通知」にしろ「局長通知」にしろ、「通知」そのものの効力が低下しているのは時代の趨勢のようだ。以前だったら「通知」が錦の御旗になったが、いまはだいぶ色あせた。
今回のまつ毛エクステの業権にしても、「課長通知」では指導どまりで、それ以上の営業停止や閉鎖命令などは難しそうだ。
もちろん万が一事故があった場合は、無資格者の責任はより重く追求されるだろうが、事故もなく、しかも安全面や衛生面に万全の配慮をしている無資格営業者を営業停止にするだけの法的な根拠があるのだろうか。
さらに言えば、優良な無資格営業者を営業停止にして訴訟になった場合、公判を維持できるだけの根拠が「通知」にはあるのだろうか。
「通知」の法的な位置づけ、「通知」の効力について、いかほどのものか小紙も知りたい。
タグ: コラム, 理美容カフェ