大廃業の足音は聞こえはじめている
Posted on | 3月 10, 2015 | No Comments
春節で大挙来日した中国人観光客の「爆買」がマスメディアで大々的に報道された。
春節の期間中、50万人が来日し1500億円を使ったという。「魔法瓶」「セラミック包丁」「洗浄便座」「電気炊飯器」が4大爆買商品で、これ以外にも化粧品や市販薬なども売れたという。
かつて美容界にも「爆かけ」(パーマネント)、「爆染め」(ヘアカラー)という言葉があった。ご年配の美容師さんならご記憶の方もいらっしゃると思うが、電髪からコールドパーマに代わった戦後のことで、昭和30年頃が最盛期だった。それから少し遅れてヘアカラーが大流行した。美容室が少なかったせいもあり、どの美容室も大入りの客で、美容室にとってはいい時代だった。
半世紀以上も昔のことを懐かしんでも仕方ない。しかし、いまの惨憺たる実情をみるにつけ、つくづく昔は美容業界にとって良い時代だったと思う。
家計調査をみると、美容関連への支出は1万円を割り込んだままだ。ヘアカラーこそ横バイだが、パーマ客は減っている。最近では美容室への利用回数は増えてはきているが、支払金額は減っている。つまり消費者は安いサロンに行っているのだ。
美容業界が不況に見舞われてからだいぶ経つが、そんな景気の悪い美容業界にもかかわらず、不思議なことに美容室は増え続けている。なぜか? 理美容業界では厚生労働省の衛生行政報告の事業所件数データを使用しているが、このデータそのものに問題がある。開業届はきちんと出すが廃業届は出さずに辞めてしまうケースは多くあると指摘されている。
だいいち消費者が美容に支払う料金の総額を24万軒の美容室で割ると、とても生活できる金額にならない。
昨年6月に当コラムで「美容店の大廃業時代の到来」という一文を掲載した(http://ribiyo-news.jp/?p=12839)。衛生行政報告をみて、増えているじゃないかと批判する人もいるかもしれないが、他の調査(経済センサス調査)で減少に転じているのをみても、すでに大廃業の足音は聞こえはじめている。
【小山秀男氏のホームページ】
http://www.koyama-lab.com/
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