「最寄り」頼みには限界 来店動機の分析
Posted on | 4月 1, 2012 | No Comments
理美容業は「最寄り産業」である。地域密着産業ともいい、飲食やクリーニングなどともに括られる。
客は自分が通える近くの理美容店の中から利用する店を選ぶ。その際、有力な動機付けは「口コミ」である。理美容店の集客のポイントは「最寄り」と「口コミ」といえる。
理美容店の利用者は、普段通る道筋にある店を選ぶ。駐車場のある郊外店だったら、車で来れる距離になる。電車で出かけたり、長距離をドライブして来る人は少ない。
口コミは店を利用した客の評価である。技術の腕前、接客、技術者の人柄、店の雰囲気などを評価して、知り合いや家族に話す。客が勝手に行う評価とはいえ、繁盛している理美容店は口コミで客を増やす。客からの評価は店の価値そのもので、固定客化に直結する。客から評価されない店は廃れる。
理美容店にとって、「最寄り」と「口コミ」が集客の基本中の基本であることは変わらないが、、最近は集客のきっかけとして、宣伝PRとホームページの存在感が増している。
NBBAサロンユーザー調査2011年では、理美容店を利用するきっかけをきいている。
女性客が美容室を利用するきっかけは、「宣伝」は33%で、「最寄り」の37%に迫る勢いだ。宣伝の中にはクーポン券、フリーペーパー、チラシ、キャンペーン、駅の看板などを含むが、駅の看板を除いて回答者の1割以上が回答している。
一方、理容店を利用している男性は、最寄りが76%なのに対し宣伝は8%と格段に少ない。ホームページは1%でしかない。
利用動機は男性と女性で大きく異なる。この男女差は、男女による違いというよりは、理容店と美容店の集客への取組みの違いといえる。理容店でクーポン券、フリーペーパー、チラシ、キャンペーン、駅の看板を出している店は少ない。ホームページを開設している理容店も多くはない。となれば客は最寄りと口コミで理容店を選ぶほかない。理容店を利用する男性は選ぶ選択肢が限られている。
そのことは、男性でも美容室を利用している人のきっかけをみれば分かる。美容室派の男性は理容店派より、最寄りが20%減る。そのぶん、口コミ、宣伝、ホームページが増える。オシャレに対して敏感で、情報の収集にも熱心なのだろう。
理容店は集客するのに最寄りを頼りにしているのだが、口コミ評価も高くなく、宣伝などもしていないとなれば、客は減り、衰退していく。実際、10分1000円のクイックバーバーに流れる客は増え、美容店への男性客の流出は続いている。
別稿で2011年のデータを元に美容産業1兆4千億円、理容産業7000億円、合わせて理美容業界の市場規模は2兆1000億円と推測したが、理容と美容の差は現在進行形で開いている。
マクロな視点で理容と美容を比べれば、美容が優位な方向に進んでいるのは間違いないが、ミクロな視点でみれば、何の努力もしない美容室は衰退していくし、理容店でも頑張る店は繁盛している。要は個々の店の努力、やり方次第だ。
資料提供:全国理美容製造者協会(サロンユーザー調査2011年)
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