本物の美容師 だけが生き残れる

Posted on | 1月 17, 2011 | No Comments

自然淘汰の時代を迎えた美容業界
いま美容業界は低迷している。
サロンの料金を表す小売物価調査によると、パーマ料金は全国平均で7649円と前年同月比194円上昇し、デフレ経済下の中で健闘しているかにみえるが、実際これは見かけだけで、消費者が支払う家計調査では、前年同月比マイナス９．９％と1割も縮小している。平成17年を１００とした指数では２１．７％も落ち込んでいる。これら政府統計を見ても美容業界が落ち込んでいるのがわかる。

原因についてはいろいろ考えられるが、最大の原因はここ何十年か美容業界の主流をなしてきたカット＆ブローにある、と私は思う。つまりカット＆ブローの限界が見えてきたのだ。
カット＆ブローの限界はここ数年間で顕在化してきており、この限界から脱出するために、業界では様々な提言がなされてきた。「オンリーワン」を目指そうというのもその一つだし、パーマの復権運動も背景にはカット＆ブロー一本槍からの脱出があるのだと思う。しかし、いまのところ華々しい効果を上げたという話は聞かない。

消費者の財布の紐は堅く、しかも美容業界は22万件を超すオーバーショップの状況である。美容室の経営はいっそう厳しくなり、すでに淘汰の時代に突入している。いま営業しているサロンもこのまま何の手も打たなければ、自然淘汰されるし、生き残ったとしてもバラ色の将来は期待できない。

自然淘汰を逃れ、夢のある将来にするためには何かアクションを起こさなければならないが、私が提言したいのは、美容の「原点に帰れ」である。美容の原点、つまり美容師の原点であるが、それは何か。

私のいう美容師の原点は、トータルな技術ができる美容師である。いまの美容業界ではカット＆ブローができればスタイリストとして通用するが、カット＆ブローの限界が見えた以上、これからはそれだけでは生きていけない。美容の技術者として欠けているものは何かというと、ピンカールに代表される、先人達が築き上げた技術である。

カット＆ブローが自然なスタイルの追求だとしたら、ピンカールに代表される技術は美容師でなければできない装飾性の高い技法である。逆毛を立てる、それにはレーザーによるテーパリングが必要だし、最終的なデザインを考えてのピンカールのテクニックが求められる。しかし、残念ながらいまの美容師でこれらを完璧にこなせる美容師は少ない。ご年配の美容師さんには熟達者がいらっしゃると思うが、若い美容師さんでこれらの技術をこなせる人は極めて少ない。

装飾性の高い髪型は、水商売の女性に限定されていた時期はあったが、いまそれらの髪型を求めて多くの女性、特に金銭的に余裕のある中高年の女性が大挙して来店されているという。つまり、高齢化社会を迎え、中高年女性が求める装飾性の高い髪型のできる美容師に脱皮することがこれからの時代を行く抜くために必要なのである。

カット＆ブローの自然派ヘアはなくならないだろうが、自然派スタイルを求める若い人は間違いなく減る一方なのに対し、カット＆ブローに満足しない女性は一本調子で増える。このことを理解すれば、今後生き残るための方策は分かると思う。美容師の原点に帰ることは、パーマ復権運動にもつながる。

いま装飾性の高い髪型を指導できる先生はそうはいないし、これだけのテクニックは一朝一夕に修得できるわけではない。しかし、これからの生き残りをかけて美容師を続ける意欲があるのなら、数年後を目途にこれらの技術習得に取り組まれることを提言したい。

ピンカールに代表される技術を修得するまでの数年間、この間どうしたらよいか？　次回はすぐにでもできる取って置きの方策を提案したい。

＊「小山秀男の日々雑感」は美容業界への提言をはじめ、斬新な器具機材を独自に開発してきた小山秀男氏が日々感じたことをフリーテーマで掲載するコラムです。

小山秀男氏のホームページ
http://www.koyama-lab.com/

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