人工皮膚モデルでシワの原因を解明
Posted on | 10月 22, 2023 | No Comments
人工皮膚基盤上で突起構造を持つ皮膚モデルを作成することに成功し、深いシワの原因の一つが解明された。将来のシワ改善につながる可能性がある。
ナリス化粧品は、皮膚の性状と肌の内部構造の関係を研究する中で、表皮と真皮の間に存在する真皮の乳頭突起に類似する構造を持つ、培養皮膚モデルを作ることに成功。また、その皮膚モデルを研究することにより、突起が形成される途中の段階における、表皮細胞の収縮と収縮を制御する因子であるMMP-9の重要性が示された。さらに、MMP-9を増やす成分として発見した「モリンガ種子」に、表皮細胞の収縮を促進させ、乳頭突起の加齢による平坦化を改善する効果を確認した。同社が2023年10月17日発表した。
肌の真皮と表皮の間にある凹凸の乳頭突起は、加齢によって凹凸が浅くなり、減少・平坦化してしまうことが知られている。
同社は、この乳頭突起の数や構造が、肌の水分量や色・シワ等の皮膚の性状と関係することを報告(2014年 日本美容皮膚科学会 優秀演題に選定)していた。
乳頭突起が形成されるメカニズムが解明されていないことで、その制御の根幹の解明には至っていなたかったが、同社は皮膚以外の臓器の研究からヒントを得た実験の結果、特定の組成の人工皮膚基盤上で細胞を培養することで、乳頭突起に類似する突起構造を持つ皮膚モデルを作成することに成功した。
2014年の発表から9年を要した研究成果であり、今回開発した皮膚モデルには、皮膚の状態の改善に重要な役割を果たすと考えられる乳頭突起の構造を制御する研究や、人工皮膚を製造するなど再生医療への応用が期待できる、という。
研究した同社研究開発部の上田浩士さんは
「今回開発した、人工的な突起を形成した皮膚モデルは、乳頭突起の形成のメカニズムの研究や、人工皮膚の製造など再生医療への応用が期待できる、新しい技術です。皮膚状態の改善に重要な役割を果たすと考えられる乳頭突起に関する研究は、今後も継続していきたいと考えます。」とコメントしている。
<以下、同社の発表した研究成果>
・老齢の表皮細胞は、収縮する力と収縮を制御する因子のMMP-9が低下している。
乳頭突起が形成されるメカニズムを明らかにするため、人工的な突起を形成した皮膚モデルを使用した実験を行いました。表皮細胞がギュッと収縮する力を低下させる処理を行うと、皮膚モデルの突起の形成の程度が減少し、平坦化することがわかりました。そこで、表皮細胞の収縮力と乳頭突起の形成に関連があると仮説を立て研究を進めた結果、加齢した表皮細胞では、収縮力と収縮制御因子のMMP-9の量が低下していることを突き止めました。これらの結果から、突起の形成における表皮細胞の収縮とMMP-9の重要性が示されました。
・モリンガの種子に乳頭突起を増やす効果を確認。
MMP-9が乳頭突起の形成に関与することが予想されたため、MMP-9産生を促進する成分の探索を行ったところ、健康食品としても活用されている植物「モリンガ」の種子が優れた効果を持つことがわかりました。モリンガ種子を配合した製剤をヒトに塗布し、肌を傷つけることなく肌の内部構造を観察できる機器を使用して確認を行うと、乳頭突起が増えていることも確認できました。
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