美容店舗数 データで差がある理由
Posted on | 2月 20, 2013 | No Comments
「違いがあるのもほどがある」のが美容店の店舗数だ。厚生労働省が発表する美容店舗数と、総務省が発表するその数字とでは大きな開きがある。
どちらが正しいのか、という質問をよく受ける。答えは、どちらも正しい。理由は調査する目的が違う、からだ。
厚生労働省が昨年秋に発表した平成24年3月末の美容店舗数は22万8429店と過去最高を記録した。一方、総務省の経済センサスの最新データは平成21年で17万6157店である。ざっと5万2千の差がある。これだけ差があれば誰でも疑問に思う。
ちなみに厚生労働省が発表した平成21年のデータは22万3645店で、4万7千の差になる。
厚生労働省が発表する衛生行政報告は、保健所への届出の件数を集計したデータである。開業、廃業、従業者(美容師)などの届出が義務づけられている。
これを年度末の3月31日に締めて、その年度の店舗数や従業者(美容師)数を集計して発表する。
一方の経済センサスは、国内のすべての事業所を対象にしている。調査員による調査や、郵送などの方法などで国内の事業所の実態を集計している。
厚生労働省のデータは衛生行政を目的にした統計であるのに対し、経済センサスは経済の実態を調べる調査である。数値の違いは調査目的の違いによるところが大きい。
経済センサスでは、法人は別にして、美容店経営者の大半を占める個人事業の場合、
例えば、地方の農村部などでは農業と兼業で美容店を営業している店があるが、兼業者はどちらか一つの事業にくくられる。
都会では、不動産業やスナックなどの飲食業と兼業している美容店がある。同様にどちらか一つが事業所として集計される。
例えば、商業施設やスーパーなどに入って営業している美容店がある。これは美容店としてではなく商業施設、スーパーに内包されてしまう。ホテルやレジャー施設、大型浴場施設などで営業する店も同様だ。
例えば、最近は減ったが理容店では、厚生施設として営業している店がある。これも経済センサスでは、厚生施設として使用している事業者に内包されてしまう。
例えば、都心のマンションなどで隠れ家的に営業している美容店がある。これは調査対象から漏れる可能性がある。
といった具合だ。例えばの例はまだまだある。
こうして、経済センサスは、届出数より過小にカウントされる。
厚生労働省の衛生行政報告では、たとえ1週間のうち1日しか営業していない農村の美容店も1件としてカウントされる。衛生を所管するには、当然すべての事業者が対象になる。
また衛生行政報告では、開業時には開業届けが必須だが、廃業時に届けを出さないケースが指摘されている。廃業届は税務関係では届け出ないと、督促されたりするので、所管する役所に廃業届けは出すが、保健所には出さないで店を閉めてしまう人がいるらしい。
近年では夜逃げ同然に店をたたんでしまう経営者もいる、という。
そんな廃業者の無届が蓄積して、衛生行政報告の店舗数は実数より、いくらか多くカウントされているものと思われる。
一方、従業者(美容師)数をみると、店舗数とは逆に経済センサスの方が多い。平成21年の従業者数は、経済センサスでは48万2191人なのに対し、厚生労働省の調査では45万3,371人だ。経済センサスが2万8千人ほど多い。
この違いの説明は簡単だ。衛生行政報告は有資格者の美容師をカウントしているのに対し、経済センサスは有資格者・無資格者関係なく、事業所で働いている人をカウントしているからだ。
無資格のレセプション担当者や事務スタッフもカウントされる。もちろん中には無資格の技術者もいるかもしれないが、経済センサスでは有資格・無資格は関係ない。
それにしても、美容店における衛生行政報告と経済センサスの開きは大きい、と感じる人は多いだろう。「違いがあるのもほどがある」だ。
生衛業ではもっと違いがある業種がある。食肉販売などは、一つのスーパーに複数の業者が入っていることが多く、その違いはいっそう大きくなる。
結果に違いのあるのは生衛業関係だけかと思ったら、児童生徒の自殺者数の調査では、文科省によると200人、警察庁によると350人と大差があったりする。どうも我が国の調査は「?」がついてまわる。
で、当の厚生労働省はというと、しっかりデータを使い分けている。衛生をテーマにした会議の資料では衛生行政報告を、振興をテーマにした会議では経済センサスを、といった具合だ。
「理美容ニュース」もテーマに応じて使い分けている(つもりだ)。
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