続・レトロ・イノベーションのすすめ
Posted on | 8月 12, 2011 | No Comments
前回、「レトロ・イノベーションのすすめ」と題して、技術革新の乏しい美容業界では、過去の素晴らしい技術を見直し、再評価することも大切であると書いた。
これは経営の神様の異名を持つ、ドラッカーが「先進的な技術革新の重要性とその必要性」を唱えていることを踏まえ、美容界に当てはめてみたものだが、美容業界のレトロ・イノベーションとして、具体的にレーザーカットやピンカールをあげることができる。
カット&ブローばやりの今の美容業界でレーザーを使う美容師さんはほとんどいない。しかし、レーザーカットならテーパリングすることで、毛先を細く削ることができる。髪の毛の太さは、欧米人は55デニール、日本人など東洋人は太くて、75デニールが平均といわれている。太い毛の毛先を細く処理することで、セットもしやすく、毛先が絡みやすくなるので、セットが長持ちする。毛量調整のセニングを行う場合でも、レーザーですいた毛はなじみやすく、収まりがいい。
美容技術の真髄ともいえるアップスタイルや結上げスタイルは、レーザーで逆毛を作ることが前提である。それほど重要で、かつ基本的な技術なのだが、今の美容師さんは見向きもしない。
ブラントカットのシザーカットには、シザーカットのよさはあるが、レーザーにはレーザーでなければできないよさがある。カットのプロを自負する美容師さんなら両方ができなければ真のプロとはいえない。
もう一つのレトロ・イノベーションはピンカールだ。フラット、フレア、スタンダップ、バレル、ピンリッジの5つのカールを構成することで、あらゆるウエーブスタイルを作り出すことができる。これも美容の技術の基本であり、重要な技術だ。
いま美容業界では、17%の売上げ比率を30%にまで伸ばすことを目標にパーマ復権運動に取り組んでいる。しかし、この運動でピンカールは顧みられていない。
パーマが敬遠される理由として、施術に時間がかかる、髪の毛が傷む、臭いが気になるなどなどが主な理由とされている。しかし一番の問題は、お客様が求めるヘアスタイルを提供できないのと、再現性に問題があるからだと思う。
パーマ復権運動では、若い人に好まれる緩めのパーマヘアを提案しているが、緩めのパーマをかけるくらいなら、ストレートのままで十分だ。
美容室でパーマをかけたときは美容師さんがブローするからいいが、お客様が自宅ですると、思うようにいかない。手間や時間がかかる。この辺が問題なのだ。
お客様が求めるパーマヘアスタイルを提供できるのは、5つのカールを駆使して作るピンカールによる技術である。
ピンカールなら仕上がりを想定してパーマ処理するので、お客様が自宅でシャンプーしたあとも、手ぐしをするだけでさっとヘアが再現できる。
お客様は自分の望む、おしゃれなヘアスタイルが手に入るなら、施術時間の長さや、臭いなどは我慢する。それが女心というものだろう。
この辺のところを理解しないで、パーマ復権運動といっても、業界あげての徒労に終わるのは間違いない。
17%売上げているパーマ客の大半を占めるのは、60代、70代の高齢者という。いまパーマをかけていない若い人が高齢になったときパーマをかけるか、というとそんなことはない。
パーマ比率を30%にまで引き上げるのが目標のパーマ復権運動だが、私は17%をさらに下回ると残念ながら予想せざるをえない。
パーマ復権運動は、ピンカール復権運動でなければならないのだ。
ピンカールは一朝一夕で習得するのは難しい。しかし、私が愛する美容業界の将来のため、後世の美容業界のためにも、復活させなければならない技術である。
昔の素晴らしい技術をいまの時代に復活させる。それが美容業界の「レトロ・イノベーション」なのである。
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