優れた技術を持っている者が勝ち残るのではない
Posted on | 3月 9, 2014 | No Comments
いま美容業界でアップスタイルが見直されている。某NPO法人ではアップスタイルの認定講習を、この3月から始めるという。
アップスタイルは、「髪を扱う職業の基本中の基本といえる技術で、より消費者需要に密着した高度な技術と感性を磨く」ことの大切さを掲げての認定事業だ。
むかし、美容店といえばパーマ屋さん、もっとむかしは髪結さんといわれていた。美容師法にも「美容」の定義として、パーマネントウエーブ、結髪、化粧の3つの技術をあげている。結髪とアップスタイルとは技術面では厳密にいうと違うのかも知れないが、ほぼ同義語だ。セットと呼んでもいい。
そのセットは恐ろしい勢いで需要が減少し、政府の家計調査では平成16年の調査を最後に消滅している。ちなみに平成16年の家計調査のセットは平均金額が2814円、購入世帯が1万世帯中85世帯しかない。それまではパーマとセットが美容業の稼ぎ頭の双璧だったのを思えば驚きを禁じ得ない。
ちなみにパーマも需要が減っている。ただ平成24年のデータを見る限り、平成16年当時のセットの20倍の市場はあるので当分は消滅する懸念はないが、それでもいまのうちに何とかしなければ将来は危うい。
セットにしろパーマにしろ、需要が減ったのは社会の変化によるところが大きい。生活様式が変化し、それにともないファッションが変わったためだ。
女性の社会進出が進むと、時間に余裕のない女性が増える。忙しく働く女性にとって、セットでの美容店通いや時間のかかるパーマは敬遠せざるをえない。サスーンカットの登場も相まってカット&ブローへと需要が変化していった。カット&ブローでつくられるヘアスタイルをする女性が増えるとそれが流行になり、いまでは定番ファッションになっている。
つまり、女性を取り巻く生活環境が変わり、その変化に対応したのがカット&ブローだった、といえる。美容師さんのセット技術、パーマ技術が未熟なためにセットやパーマの需要が落ち込んだわけではない。
カット&ブロー全盛が続いて久しい。若い美容師さんはセット技術やパーマ技術に疎い人もいるだろう。そういう人たちがセットやパーマの技術講習、認定講習を受けるのは無駄だとは言わない。しかし、アップスタイルやパーマの需要が復活しない限り、結局は技術の持ち腐れで終わってしまう。技術習得が、徒労に終わるのは目に見えている。
セットやパーマの講習を行うのに合わせて、一般消費者への需要喚起をはかる取り組みが必要だが、これは技術講習ほど簡単にはいかない。
美容業界では、技術講習が多く行なわれている。美容師さんも技術の習得に熱心だ。しかし結局のところ、教育のための教育で終わってしまうことが多い。
最後に、「強いものが生き残るのではない。環境に適応したしたものが生き残る」というダーウィンの言葉を援用して、「優れた技術を持っている者が勝ち残るのではない。消費者のニーズを的確に読み、それに対応できる者(経営者)が勝ち残る」と言っておこう。
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