衰退する理容業

Posted on | 10月 1, 2018 | No Comments

平成の時代は、理容業が衰退した時代といえます。昭和の60年代にはすでに衰退の傾向がみられましたが、平成の30年間、店舗数、理容師数とも減少し続けました。

店舗数は昭和61年（1987）の14万4994店舗を頂点に以降、多少の増減はあるものの減少し、平成29年には12万2千台にまで減少しています。理容師数も平成6年（1995）の25万2705人を最多に店舗数同様減って、平成29年には22万人台になっています。

理容業界は、生衛16業種のなかでも組合組織の強い業界として知られていますが、実際の店舗数の減少を上回る勢いで理容組合員は減りました。
組合員数は、店舗数が最多を記録した昭和61年に13万2702店舗の加盟を数え、85％の組織率を達成しましたが、組合員は減り続け、現在では5万人の大台を割り込んでいます。組織率も40％台に落ち込んでいます。それでも生衛16業種のなかではトップの組織率です。

昭和50年代後半からすでに飽和状態、停滞期に入っていた理容業界です。そんな情況を打開するために、全理連（全国理容生活衛生同業組合連合会）は来るべき21世紀に向けて平成5年（1993）に「理容産業21世紀ビジョン作成委員会」（委員長・安倍一成山口大学教授）を立ち上げ、3年後の平成8年に「快適・優美産業めざす」ことをうたいあげたビジョンの答申を得ます。
ビジョンの答申には、理容業の将来予想をいくつかシミュレーションし、何も手を打たなければ急速に理容業界が衰退すると警鐘を鳴らしていました。

営業支援策や後継者の育成など、あの手この手の考えられる手は打ったことは周知の通りですが、結果は前述の通り、ビジョンで懸念したシミュレーションに近い数値です。
あの手この手の打開策が失敗だったのかというと、そんなことはありません。理容業衰退の理由は、すでに昭和30年代後半から40年代にあったのです。

ひとことで言うと、時代の流れに柔軟な対応ができなかったのが理容業衰退の原因と考えられます。
その一例として理容の技術をあげることができます。カットラインを連続させた整合性、定型的なヘアスタイルなどを技術の基本としてきた理容です。昭和30年代の男性のロングヘア化でつまづきました。さらにデザイン性を追求するには連続したカットラインでは対応できないヘアスタイルが次々と流行りました。ツーブロックカット、セクションカットなどです。これら社会の流れに柔軟に対応できなかったことから、若い男性客を美容店に奪われる結果になってしまったのです。

いま理容店の経営者の平均年齢は60歳を超えていますが、60歳以上の理容師さんはツーブロックカットなどに無縁な人もいると思います。

平成の次の時代も理容業の衰退は続くと思います。店舗数は10万件を割り込み、6年後には組合員数は3万人台になると推測します。
いまの若い理容師さんは数は少ないですが、繁盛店を経営している人もいます。また女性理容師さんでエステを導入して成功している人もいます。
次の時代、理容業界が一皮むければ、また違った可能性のある業界が生まれるものと期待します。時代の変化、流行に敏感に反応し､柔軟に対応できれば理容の可能性は十二分にあります。

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